光センシング技術

光センシング技術

テラヘルツパルス波計測システム

1. テラヘルツパルス波の発生・検出原理

1. テラヘルツパルス波の発生・検出原理

1.1 テラヘルツパルス波の発生
 図1にテラヘルツパルス波の発生素子を示します。テラヘルツパルス波は、半導体基板上に形成された光伝導アンテナに電圧を印加し、フェムト秒パルスを照射することで発生します。パルス幅100フェムト秒以下(1フェムト=10-15)の近赤外フェムト秒パルスを光伝導アンテナ(半導体基板は、半絶縁性ガリウムヒ素:Si-GaAs上に低温成長させたガリウムヒ素:LT-GaAs)に照射すると、1ピコ秒(1ピコ=10-12)程度のパルス幅を持つテラヘルツ電磁波が発生します。一般的に、フェムト秒パルスを発生させるフェムト秒レーザーはモード同期レーザー(繰り返し周波数~100HMz)が使用され、テラヘルツパルス波はモード同期レーザーのパルス繰り返し周期に同期して発生します。

図1: テラヘルツパルス波発生素子.
図1: テラヘルツパルス波発生素子.

 

1.2 テラヘルツパルス波の検出
 テラヘルツパルス波の検出は、ポンプープローブ法に基づいて行われます[参考文献]。検出器に繰り返し到達するテラヘルツパルス波は、1ピコ秒程度で変化するパルス波です。しかし、パルス波形を高速で電気的に検出することは困難です。
 図2にテラヘルツパルス波の検出素子を示します。検出器用光伝導アンテナにテラヘルツパルス波が到達するタイミングと、フェムト秒パルスを照射するタイミングを合わせることで、ポンプープローブ法によるテラヘルツパルス波形の検出が可能となります。この計測原理により、テラヘルツパルス波とフェムト秒パルスの到達タイミングが一致した瞬間のテラヘルツパルス波の電界の強さが電流値となって検出されます。

図2: テラヘルツパルス波の検出素子.
図2: テラヘルツパルス波の検出素子.

 

1.3 テラヘルツパルス波発生・検出システム
 図3にシステムの概要を示します。フェムト秒レーザーからの光パルスはビームスプリッターによって分割され、一方はテラヘルツパルス波発生のため光伝導アンテナに (ポンプ光)、もう一方はテラヘルツパルス波検出のため光伝導アンテナに導かれます(プローブ光)。光サンプリング計測により、テラヘルツパルス波を検出するには、テラヘルツパルス波が検出器に到達するタイミングとフェムト秒パルスが検出器に照射されるタイミングを調整する必要があります。プローブ光の光路にはこのタイミングを合わせるための光学遅延ユニットが配置されます。光学遅延ユニットは通常、光学遅延ステージと光路折り返しミラーで構成されます。この光路折り返しミラーを移動させることによりプローブ光の光路長を変化させ、検出のタイミングを調整します。

テラヘルツパルス波の発生・検出システム例
図3: テラヘルツパルス波の発生・検出システム例.

 図4にポンプープローブ法によるテラヘルツパルス波の計測原理を示します。①の状態は波形データ取得開始時を示しています。この時、光学遅延ステージが光路長をもっとも短くする状態にあり、データ取得開始の状態です。②は光学遅延ステージが移動中の状態であり、光学遅延ステージの移動に応じて、テラヘルツパルス波の電界の強さを逐次取得します。③は波形データ取得終了時を示しています。この光学遅延量がテラヘルツパルス波形取得時の時間窓を決定します。①~③の1サイクルで1波形のテラヘルツパルス波を計測します。テラヘルツパルス波計測における計測時間窓と波形取り込み時間は、光学遅延ステージの総移動量とその移動時間によって決定されます。

ポンプープローブ法によるテラヘルツパルス波の計測原理
図4: ポンプープローブ法によるテラヘルツパルス波の計測原理.

参考文献:深澤 亮一:光アライアンス,日本工業出版,2,pp.26-32,(2010)

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